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ひとつひとつの違いにこだわり新世代のクリスマスローズを育てる「大木ナーサリー」

2022.10.11 / 高村学
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「大木ナーサリー」のクリスマスローズ

数多くの植物が自生することから「花の山」とも称される八ヶ岳。農園「大木ナーサリー」は、その「花の山」からほど近い自然豊かな場所でクリスマスローズを育てています。早春に可憐な花を咲かせるクリスマスローズはピンクや白、赤、紫といった多くの花色があり、うつむき気味に開花するのが特徴です。「大木ナーサリー」を手掛けるのは、育種家の大木俊明さんです。大木さんはクリスマスローズを原種から育て、一重や八重の花を交配させながら新たな品種を生み出しています。クリスマスローズはひとつひとつ微妙な違いがあり、その違いを楽しむ愛好家が増えています。2022年2月に「エヴァムエヴァ ヤマナシ」で開催したクリスマスローズの展示即売会には多くの愛好家たちが集まりました。

大木俊明さんは、東京芸術大学を卒業後、「コム デ ギャルソン」に勤務した後の2006年に山梨県北杜市に農園を構え、クリスマスローズを中心にペラルゴニウム、シクラメン、ケープバルブなどを育てています。「大木ナーサリー」には冬に成長する植物が多く、秋になると球根が一斉に動き出します。日中はほとんど農園にいるという大木さんですが、まず鉢植えの植物の土が乾いていないかどうかを確認し、水遣りや植え替え、受粉などの作業を行います。大木さんは自然の動き、特に天気と気温に敏感で、自然の変化を日々感じながら植物と向き合っています。

■育種家になったきっかけ
特に山野草が好きで、幼少期から園芸店などに通い、さまざまな植物を育ててきました。当時としては珍しかったクリスマスローズも身近にあり、「憧れというわけではありませんが、なんとなく気になる存在でしたね」と語ります。ただ、クリスマスローズを育てるようになったのは20代後半でした。「その当時、東京の小金井市に住んでいたのですが、杉並、調布、清瀬にクリスマスローズの御三家と呼ばれる農園がありました。杉並の『野田園芸』と調布の『花郷園ナーセリー』は農園を公開していたので、休みの日に通って苗を購入して育てていました。それから、当時の職場だった青山にIDEEというインテリアショップが運営している花屋があって、クリスマスローズの原種を販売していました。子どものころに見たクリスマスローズは暗紫褐色のような、黒みがかった紫色で、正直あまりきれいではない地味な花という印象でしたが、そこで見たものは花も色もとてもきれいでした。それに、当時はシングルの一重咲きしかありませんでしたが、その花屋にあったダブルの八重咲きに惹かれました。ただ、自分が欲しいと思ったクリスマスローズは非売品だったりとても高価だったりしたので、それであれば自分で作ろうと思ったのが育種家になるきっかけでした」。


■花の色がきれいに出る場所
山梨県に移住するまで住んでいた八王子の自宅は、苗を1,000株以上置ける広さで、庭いっぱいにクリスマスローズを育てていました。ただ、その庭も手一杯になってきたため広い場所を探していた時に、著名な造園家のポール・スミザーさんがこの場所を紹介してくれました。「ポール・スミザーさんとは以前一度だけお会いしたことがあって、いずれは農園を構えたいと話したことを覚えていてくれました。そのご縁もあってこの場所に農園を構えることを決めました。このエリアは、標高が1,000メートルを下回るため年間を通して比較的涼しく、真夏でも夜温が下がります。熱帯植物は別ですが、東京のような熱帯夜だと人間と同じで植物も疲れてしまいます。この辺りは花の色もきれいに出やすい場所で、植物にとっては最適な環境です」。

■今の時代にないものを作っていく
「大木ナーサリー」のクリスマスローズは、花も株も小さいのが特徴です。「他の農園のクリスマスローズは葉も株も大きい種類が多いのですが、デュメトルムというクリスマスローズで一番小さい花が咲く原種をかけて小さくしています。クリスマスローズのほとんどの原種は花が緑で、1世代では白い花は咲きませんし、株も3世代から4世代くらいまでかけてようやく小さくなります。今はだいたいどんな花が咲くかイメージできますので、作りたいクリスマスローズのビジョンがあります。クリスマスローズの花は蕚であって花弁ではないので、葉のような花を作りたいと考えています。アネモネでは花弁が葉の形、花も緑色のものがあって、そういったクリスマスローズを今は作りたいです。人と同じことはしたくないと思っていますが、川久保玲さんから多少は影響を受けているところもあるのかもしれません。今の時代にないものを作っていこうという気概のあるデザイナーですから」。

■クリスマスローズの家系図
クリスマスローズは、ヘレン・バラードやエリザベス・ストラングランといったイギリスの女性育種家たちが基礎を作ってきました。大木俊明さんはまさに新世代の育種家で、データを取りながら法則性に従って新しいクリスマスローズを作っています。「予想していなかった花が咲く時もありますが、それもまた楽しいと感じています。これからは家系図が作れるくらい、データを取っていこうと考えています。クリスマスローズの家系図ですね。そこまでいければクリスマスローズはさらに面白くなっていくと思います」。新しい世代の育種家が作り出す「新世代のクリスマスローズ」に注目が集まります。

■「大木ナーサリー」概要
公式ホームページ 
公式オンラインショップ
公式インスタグラム

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華道家 中村俊月 Shungetsu Nakamura
Shungetsu Nakamura
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