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祈りとの調和を目指す、花有子さんの繊細でやさしいエネルギーを放つ花曼荼羅
■繊細でやさしいエネルギーを放つ花曼荼羅
サンスクリット語で「種」を意味するビージャ。花材の中からビージャになるものをひとつ選び、これから描いていく曼荼羅の中心に添えて、円を描くように花を並べていく花曼荼羅。曼荼羅は色砂や顔料を使って描くのが一般的ですが、鮮やかな花材を使って描く花曼荼羅は植物が持つ生命力と相まって、繊細でやさしいエネルギーを放つのを感じさせます。
「星詠み」の活動をしているLicacoさんとともに「星と植物とわたしたち」を主宰する花有子さんは、キールタンという祈りのうたの時間のために花曼荼羅をつくり始めました。キールタン(Kirtan)の「kir」はサンスクリット語で「賛美する」を意味し、インド版の讃美歌、または「歌う瞑想」と呼ばれています。音や声を発することで、その振動が花曼荼羅とともに波紋のように広がっていきます。「目に見えないバイブレーションを一緒にクリエイションしていくその調和のひとときが、言葉で伝えるよりも本質的なことを伝えられる気がしています」と、花有子さんは話します。その伝えたい本質的なものとは、「祈り」だと言います。
花有子さんはインドやバリ、インドネシアでヨガの修行中にキールタンと花曼荼羅に出会いました。本場のインドやバリなどでは、キールタンを始める前に必ず祭壇に花曼荼羅を飾り、祈りを捧げます。花曼荼羅は祈りに欠かせないものであり、花曼荼羅を通じて植物と向き合うことはキールタンと同じように「瞑想的」だと感じるそうです。「植物はつねに純粋で、自由でありながらバランスがとれています。花曼荼羅をするときは、植物という生命に対して自分の生命を込めて向き合っています。その時にいろいろな意識が剥がされていき瞑想に入っていくのですが、『届きますように』という祈りの思いと花曼荼羅が調和していくのをとても感じます」。
■花を讃えながら
「星と植物とわたしたち」でつくる花曼荼羅には、決まりごとは一切ありません。決まった文様もなく、参加者が置きたいと思う場所に花を置いていきます。花有子さんがひとりだけでつくることもありません。参加者たちの共同作業であり、ひとりひとりが先のことを考えたり計算したりせずに、内から生まれてくるクリエイションを大事にしながら、ただ楽しむことだけを考えます。すると、何人もの参加者が思い思いに花を置いていっても、見事に調和した花曼荼羅が生まれます。
「人それぞれ自分の中に完成したイメージを持っていますが、花曼荼羅は共同で創造していくものなので、花を讃えながら他の人がいいなと思って置いた花を尊重します。その花や置かれた場所が自分のイメージとは違っていたとしても、誰かが置いてくれたものは逆に世界を広げてくれるものかもしれません。例えば、なにか悪いことが起こると罰を与えられたのではと思いがちですが、ものの見方を広げて捉えてみると、浄化していくために必要なことなのかもしれません。そういった想念から放たれることで、思いもしなかった未来が開くこともあるでしょう。そういう時間には意味がありますし、その瞬間を持つことはとても大切です」。
■キールタン、花曼荼羅との出会い
花有子さんは、キールタンと花曼荼羅に出会うまでは地元の滋賀県で過ごしていましたが、2011年に起きた東日本大地震がきっかけとなり瞑想へと向かわせました。震源地から離れた滋賀県にいたものの、直感的になにか大変なことが起きたと感じました。その直感が花有子さんの中にあった瞑想や祈りの気持ちを呼び覚ましたのかもしれません。「物事をありのままに見る」という意味があり、インドで最も古い瞑想法のひとつと言われるヴィパッサナー瞑想を京都で体験したのもこのころです。
ヴィパッサナー瞑想では、「最初のころは、これで瞑想できているのかなと疑問に思うくらい、いろいろな考えが浮かんできて、寝ている間もなにかを考えていました。ところが、何日か経ってくると意識がどんどんクリアになっていき、なにかを考えている自分はいますが、考えることから離れていけるようになりました。自分と一体化したところから離れた時に客観視できる、自分はこうだと思ったことから分離することができました。離れたと思うとまたひとつになってしまうので、常に瞑想は新しい気持ちで取り組むことが大事です」。
「いろいろな瞑想法がありますが、キールタンと花曼荼羅は私が幸せであるように、そして大切な人が幸せであるように、そういう思いに向かわせてくれました。インドでは、キールタンは同じメロディーを淡々と繰り返してうたっていきます。いつ何分で終わるかも決まりがありません。花曼荼羅もこれが完成というものがありません。どちらも自由で制限のないクリエーションです。もし一歩を踏み出したいのに踏み出せないでいる女性がいたとしたら、花曼荼羅でその制限を取り払いたいですし、他人と比べてうまくいかないと悩んでいる女性がいたとしたら、そんなことは全くないということを感じて欲しい」と語ります。
■「星と植物とわたしたち」
花有子さんは、花曼荼羅をつくり始めたころのことをこう回想します。「一番よく思い出したのは、子どものころの自分です。滋賀県の自然が多い場所で育ち、野原でよくひとりで遊んでいたころのことです。ひとりで寂しそうに見えたかもしれませんが、大人になった今の自分から見たら、その時間は決してひとりではなくて、植物と友だちのように遊んでいたのだと思います。子どもは自然や植物とつながっていますし、花曼荼羅はそういう純粋な気持ちに戻してくれます」。
花有子さんの話を聞いていると、星も植物も人もすべては同じ尊い存在で、そして過去や未来も繋がっているのだと気付かされます。星や植物からのエネルギーを感じると、人は創造したい気持ちや願いを叶えてあげたいという思いが湧き上がるのかもしれません。「星と植物とわたしたち」は、そんな創造や祈りへの思いを受け止めてくれる場所であり続けます。
撮影:石川奈都子
■「星と植物とわたしたち」
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