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「京都・静原町で自然からの語りかけに耳を傾けながら」「ミレット」オーナー 隅岡樹里さん 

2022.06.12 / 高村学 撮影:石川奈都子
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京都市内から車で20分ほど、名刹・三千院からほど近い自然豊かな静原町で、予約制のレストラン「ミレット」を営む隅岡樹里さん。農薬を使わない野菜や石窯で焼いたパンなど、何日もかけて丁寧に仕込むヴィーガンフードが人気のレストランです。敷地のすぐ近くには、家族で手入れをしている畑があり、「ミレット」で提供する野菜や花屋に卸す花を育てています。

ホーリーバジルやラムズイヤーをはじめ、レモングラス、ルバーブ、パクチーなどが生い茂り、「あっちには桑の木やマルベリーもあって」と畑を案内しながら隅岡さんは説明します。「昨年はレモングラスがすごく増えたけど、今年はホーリーバジル。毎年増えるものが違って。レモンヴァームは優しい香りで、お茶にちょっと入れたり。タラゴンは香りがすごく良くて、タルタルソースによく使っています。ちょっと甘い香りがするから、シロップにしてライムと一緒に炭酸水で飲むと美味しいですよ」と、ハーブウォーターの楽しみ方を指南してくれます。

畑の一角には、コロナ禍をきっかけに始めたというスパイラルガーデンがあります。「永続的な文化や農業」を意味するパーマカルチャーの思想をベースにした庭で、隅岡さんは主にセージを植えています。「イメージでものごとを進めていくタイプで、畑もそのひとつ。このスパイラルガーデンもイマジネーションが湧いてきて、それを形にしました。畑であり庭であり、ここはそうやって遊ばせてもらっている空間です」と微笑みます。隅岡さんの畑にはほかにも、古来種のカーネーションやポートランド産のマリーゴールド、黄色い花が咲くセントジョーンズワート、ジンジャーリリーが枝葉を伸ばしています。「花を育てるのは本当に楽しくて。与えてくれるものしかないですね。種を蒔いたら芽が出てくる、それは本当にすごいことだと思います」。

畑には小さな清流があり、この日はジンジャーリリーが純白の花を咲かせていました。あたり一帯に甘い香りが広がっていて、隅岡さんはこの日に提供する料理のためにジンジャーリリーの花を摘んで帰ります。

「ミレット」では、この畑で採れた野菜とエディブルフラワーを使ったコース料理を提供しています。色鮮やかな野菜を使った前菜、庭のパン窯で焼いた手作りパン、そしてメインには野菜をふんだんに使ったグリル料理といったように、「ミレット」はオープンしてから15年間、コンセプトを変えることなく自然からの恵みを提供することにこだわってきました。「料理のほとんどは母と主人の畑から採れたものを使っています。母は20年前に小さい畑からちょっとずつ始めて、主人の畑は5、6年くらい前から始めて。母はハーブや花を、主人は餅米や野菜を育てていますね。母が育てた花は、京都・紫竹の花屋『みたて』に卸してもいますね。畑や土に触れていると楽しいですし、大地があることは豊かなことだなってつくづく思います」。

こうした場所で生活していると、季節の変わり目や自然の変化に敏感になるといいます。隅岡さんは最近、自然界が発しているエネルギーが変化していることを感じていて、「母も同じことを言っていますが、今年は自然界のエネルギーが上がってきている気がしますね。花や実もたくさん生っていて。それは、自然界がこっちを向いてよと私たちに語りかけているようです。人々がこれからどこに行けばいいか悩んでいる時に、もうここにあるんだよということを私たちに伝えている気がします。意識の変革の時代だと思いますから、それを目覚めさせるために植物たちは目いっぱい目立つように咲いているのかもしれません。植物も人も同じ命だと忘れがちですが、お互いが共鳴しています。自然界が発しているエネルギーは人間界へのメッセージで、植物にはそういう役割があるんだと思います。本当は環境活動なんてしなくても人間は自然と調和していけるはずで、今まで分裂していたものがやっぱりそれじゃいけないとどこかでみんな感じているのかなって。自然界の呼びかけの力が上がっているのはそういうことかなと感じます」。

隅岡さんはこう言います。「自然を感じなくてはいけない」ということではなく、ただシンプルに自然と楽しめばいいと。花を見て美しいな、心がほどけるな、幸せだなと感じるだけで十分で、きっとそれだけで植物たちも喜んでくれるはずだと。

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華道家 中村俊月 Shungetsu Nakamura
Shungetsu Nakamura
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