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「京都の禅寺でオーガニックな野草から蒸留したハーブウォーターやバームを手作りして」「おくり屋」オーナー クララ・ゲルスさん 

2022.06.12 / 高村学 撮影:石川奈都子
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寶暦元年(1751年)に京都で開かれた臨済宗の普門軒。歴史あるこの禅寺にフランスから嫁いだのがクララ・ゲルスさんです。オーガニックな野草などから蒸留したオイルやバームを手作りし、「おくり屋」の屋号で活動しています。パリで生まれ育ったクララさんは、幼い頃は毎年3、4回ほどはアビニョンに近いフランスの南部の母の田舎で過ごしていました。そのころから親戚が所有するローズマリー畑で収穫を手伝ったり、父と一緒にオリーブの木を植えたりして、自然や植物に触れて育ちました。「人間よりも猪の方が多いような場所でしたが(笑)、自然がとても身近でしたね」と、クララさんは話します。夕食の後には、ハーブティーを飲みながら落ち着いた時間を家族でゆっくり過ごすのが日課だったそうです。クララさんが暮らした地域は、あたり一面にタイムやローズマリー、セージといった野草が自生していて、「フランスで暮らした日々は、植物の思い出がとても多いですね」といいます。パリに戻る前は、たくさんのハーブを収穫して持ち帰るため、家路に向かう車内はいつも良い匂いがしていたそうです。なかでもラベンダーには特に親近感があり、「幼いころはラベンダー畑をよく散歩しましたね。フランスにはいろいろな種類があって、育った土壌や気候でも違います。1千メートル前後の標高が高いところで育ったラベンダーは特に良いとされています。万能で香りがすごく良く、精油はそれほど多くは採れないためとても高価です。私もいろいろなハーブウォーターを作っていますが、ラベンダーだけは自信がありますね」と、微笑みます。

クララさんが初めて来日したのは、21歳の時でした。同志社大学に1年間留学して、その時に禅に出会いました。禅寺の暮らしを通じて、畑にも強い興味が湧きました。23歳の時に休学してワーキングホリデーのビザで広島に行き、そこでは自然農法を学び、日本の自然や文化にも触れました。「日本に来てすごく感動したのが、季節のものや体が欲したものを頂くという薬膳の考えです。有るもので満足して、無駄なく使うという、そういった発想がとても気に入りました。日本は自然との距離が近く、季節を感じやすいですよね。自然のなかから生まれた文化や発想がとても日本らしいですね。今は禅寺で暮らしていますが、この庭にいると落ち着きます。フランスの庭や畑とは全く違いますが、両方好きです。ちょうど裏手にある畑では、ハーブと野菜を育てています。野菜を育てている畑では、イタリアンパセリやカリフラワー、バターナッツかぼちゃ、にんにく、ゴーヤ、さつまいも、長茄子、つるむらさきなどを育てています。手をかけなくてもよく育つ野菜が多いです」と、クララさんの畑を案内してくれます。

ハーブを育てている畑では、「ローズゼラニウムやラズベリー、ミント、レモンバーム、アロエ、エキナセアを植えています。マリーゴールド、カモミールも育てていますが、フランスでは食後にコーヒーを飲まない人がカモミールを飲む習慣がありますね。それから、ここにあるのはヒペリカムです。黄色い花で、6月に咲きます。フランスでは伝統的に1年のなかで太陽に一番力がある6月24日のお昼頃に収穫します。赤い成分がある陽性の植物なので、ティンクチャーにして冬の暗くなった時、鬱っぽい時に飲むと気分があがります。花を日光に当てると真っ赤な油が出て、それは火傷に効きます。そして、ローズマリーとセージは緑茶と合わせて飲むと集中力があがります。この畑にあるハーブは、子どものころから馴染みのあるものが多いですね。ローズマリーやセージは母もよく飲んでいたのを覚えています」と、昔を懐かしみます。

この日、クララさんはクロモジを使ったお茶を出してくれました。クロモジは枝や茎から油分を採取することができ、石鹸や精油にも使われています。「いろいろ試すのが楽しくて、先週咲いていた金木犀を蒸留してみたり、和の植物を蒸留してハーブウォーターを作ってみたりしています」。子どもたちのために、できるだけ自然から採れたものを使うといいます。この畑で収穫した野菜やハーブも食卓にあがるそうで、「オリーブオイルをフライパンで炒めて、セージと生ニンニクをカリッとするくらいまで炒めてパスタにするとものすごく美味しいですよ。セージパスタですね」と、レシピを教えてくれます。

クララさんは、自身の畑で育てたハーブを使い、さまざまなことを考えています。「これから作りたいと思っているのは、子どものための風邪の予防になるブレンドのハーブウォーターです。お茶だと飲んでくれないですが、ハーブウォーターなら不思議なくらい喜んで飲んでくれます。マスクの中にハーブウォーターを含ませてもいいですね。切りがない勉強だからすごく楽しいです」。

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華道家 中村俊月 Shungetsu Nakamura
Shungetsu Nakamura
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