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スウェーデンを拠点に活躍するガラス作家・山野アンダーソン陽子さんの植物の楽しみ方

2022.06.15 / 高村学 写真:山野アンダーソン陽子
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スウェーデンのストックホルムを拠点にガラス作家として活躍する山野アンダーソン陽子さんは、陶芸作家でガラスデザイナーのインゲヤード・ローマンさんに師事し、スウェーデン国立美術工芸デザイン大学を卒業後、キャリアをスタートしました。山野アンダーソン陽子さんの作品は、クリアで厚みがあるのが特徴で、スウェーデンや日本はもちろんヨーロッパ各地でも展示会を開催しています。2022年4月には東京の「groundfloor Gallery」で個展「PICKNICK」を開催し、 2024年1月には益子在住の陶芸家の郡司庸久・慶子ご夫妻とフラワーベースをテーマにした三人展を大阪で開催する予定です。山野アンダーソン陽子さんは、ガラス作品の魅力を「光と影によってその存在を感じられるところ」と語ります。今回、山野アンダーソン陽子さんに植物とガラスの楽しみ方について話を伺いました。

根が付いたままの植物をフラワーベースに入れて楽しむ

水や植物を入れた時、光の屈折を楽しめるのがガラスの面白さです。私はクリアなフラワーベースに根が付いたまま植物を活けるのが好きで、水とガラスに光が通った時の屈折で根や茎が曲がったり違った形に見えたりするのがとても面白いなと感じています。花がきれいだからというより、クリアな水とガラスを楽しみたくて花を活けています。同じシリンダーのフラワーベースでも、水をどれくらい入れるかによって茎の屈折が変わります。水をたっぷり入れたフラワーベースに茎に葉が付いたまま活けることもあります。茎や根がグラスの中にぐしゃぐしゃっと入っているその感じが面白いですよね。

実は、普段の生活に積極的に花を取り入れようとは意識していません。フラワーベースを作ったから、じゃあどんな花を活けようかと考えるのが基本で。このフラワーベースを楽しむために、どんな花を見つけてこようかと、そんなことを考えています。つい先日も、大きなボトルに花を活けたら面白いかもしれないと思って、茎がとても細いカモミールを1本だけ活けてみました。そういうのが楽しくて、花を活けていますね。

スウェーデンならではの植物の楽しみ方

スウェーデンでは、4月になると市場や花屋にたくさんのチューリップが出るのですが、それが春を告げるひとつの知らせですね。10本が1束になって売られていて、スウェーデンではそれが定番です。茎の高さもだいたい決まっているので、このくらいの高さがいいかなと逆算してフラワーベースを作ります。スウェーデンでは、イースターだと水仙、クリスマスだとヒヤシンスを飾るのも定番です。ヒヤシンスは球根でも育てますが、花が出てくる球根の芯の部分だけを活ける習慣があります。ヒヤシンスはチューリップより背が低くて花はもっと大きいので、それに合わせてフラワーベースを作ったりもします。ヒヤシンスやムスカリなど水栽培する植物は、球根が根腐れしないようにしながら、根をどう見せてどう楽しませるかをすごく考えて作ります。だから、私にとっては花より根っこの方が付き合いは長いですよね。

スウェーデンの夏はとても短くて、花を楽しめる期間が限られています。母の庭にもたくさんの花が咲いていますし、共有している庭で育てている花を摘んだりもしますが、でもそれを楽しめる季節はとても短いです。ですから、スウェーデンでは夏以外は観葉植物を育てることが多いです。自分の家にある観葉植物をカットして、水に差しておいて、根が出たら友人にプレゼントしたり。私も3種類くらい水栽培していて、根を出してあげて、土に埋めればいいだけの状態でプレゼントします。私が持っている植物で、友人が持っていない植物があれば、お互いに交換したり。そんなことを楽しんでいます。それから、ストックホルムの郊外に、りんごや洋梨、野菜を育てている王立の農園があって、自分が欲しい分だけをハサミで摘んでグラムで買うことができます。その園内を歩くだけでも楽しいですよね。無農薬のバラや環境に配慮した植物を育てているので、収穫した植物は食べることもできますしね。私もそこで詰んだ植物をサラダに入れて食べたりしています。植物なのでその季節、その土地じゃないと楽しめないものがありますよね。

ガラスの重さはガラスでしか表現できない

私の場合、人のための道具を作っているので、人の行為からインスピレーションを受けることがほとんどです。今回、東京で開催した『PICKNICK』展は、ピクニックをテーマにしました。友人とピクニックに出掛けて、飲み終わったワインボトルに森から摘んできた花を活けたり、ブランケットの上にワイングラスを置いたり、そんなことをイメージしました。細くて長いグラスが好きですが、野原に置いてこてっと倒れるのもいやなので、ワイングラスは足を重くしたり、ボールも足付きにしています。そういった細かい行為を気にしながら作るのが好きですよね。

私の作品はガラスに厚みがあって、とてもクリアです。ガラスの分量を少なくして型吹きするとすごく薄く作れますが、私は型吹きをしません。昔からスウェーデンにある技法で作っていますが、ガラスの重さはガラスでしか表現できないと思っています。それに、ガラスを吹いたあとに新聞紙で形を整えているのですが、肌触りや口当たりが型吹きしたものと全く違います。水を入れた時の屈折の仕方も異なります。そういったことも作品から感じてもらえればと思っています。2024年1月には益子在住の陶芸家の郡司庸久さん、慶子さんとフラワーベースをテーマにした三人展を大阪で開催する予定です。今回の日本滞在中もこの二人展に向けて益子、山梨、岐阜の工房や工場を訪問しています。

プロフィール:山野アンダーソン陽子
2001年よりガラス産業のメッカでもある南スウェーデンのスモーランド地方、フィンランド、ベネチアにてガラス製作技術を学ぶ。2004年、Konstfack(国立美術工芸デザイン大学)セラミック・ガラス科修士課程在学を機にストックホルムに拠点を移し、現在グスタブスベリにアトリエを構え、ガラス制作の活動の場としている。2011年、ストックホルム市より文化賞授与。2014年、スウェーデン議会が作品を貯蔵。EUのみならず、イギリス、セルビア、日本などでも作品を発表し、ライフワーク「Glass Tableware in Still Life」の活動にてガラス食器のあり方を多方面から表現思考する。

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華道家 中村俊月 Shungetsu Nakamura
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