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「ミモザがつないだ縁を楽しみ、自然との一体感を感じながら暮らす」クリエイター・吉田マリモさん 

2022.06.12 / 高村学 撮影:石川奈都子
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京都・大原野に移住したクリエイターの吉田マリモさんは、自宅兼アトリエを自ら改築し、さまざまな植物を育てながら暮らしています。「花は家のまわりに自生しているものを摘んできて、花器に活けたりドライにして楽しんでいます。これはハナミズキで、無造作に飾るのが好きですね」と吉田さんは語ります。自宅の庭には、屋根を超えるほどのミモザがあり、「3月の一番寒い時にまず水仙が咲いて、それからミモザがばっと咲きます。その時期になると、みんなが伐採の手伝いにきてくれます。伐採したミモザは、みんなにお裾分けしていますね」と、ミモザがつなぐ縁を楽しみながら暮らしています。

京都・丹後で生まれ育ったマリモさんは、幼いころから田んぼや畑が遊び場で、そういった暮らしがとても良かったと振り返ります。「血液が緑でできているんじゃないかと思うくらい植物や自然が好きですし(笑)、つねに一体感を感じていたいですね。祖父母が農家を営んでいて、藁草履を始めあらゆる日常品を自分たちで作っていました。私が今やっていることは、祖父母の暮らしをなぞっている気がしますね。大原野は自然の営みを感じやすい場所で、街中に住んでいた頃は自分の体内時計がずれているような感覚でした。その頃は無意識に土の作品を作っていて、自然から断絶された反動が出ていた気がします。自然や植物と関わる時間を持ちたいと思っていましたが、大原野に移住してそれがやっとできるようになりました」。

園芸家のターシャ・テューダーさんの作品を愛読していて、子育てをしていた頃は彼女の著書を読んでは励まされていたそうです。「自然と共生したターシャさんの生き方からは、いろいろなことを教わりました。私自身、しんどい時や心が折れそうな時でも、自然の中にいると溜まっていたものが浄化していき、リセットされる気がします。興奮していたものが沈静化して、心をニュートラルな状態に戻せますよね。緑は悪いものを吸収してくれる側面もありますし。植物を見ていると、いろいろな育ち方をしていますから、自分たちもそれでいいんだと感じます。植物と触れ合うことで、自分の物差しがやっと作れた思いです」。

今春からは、福祉事業所「暮らしランプ」のアートディレクターに就いたマリモさん。「暮らしのほんの少し先を、ほんの少し明るくするあかりを灯したい」という思いが込められた社会福祉事業所で、心身に障がいがある人たちをアートやカフェの運営を通して支援していくことを目的にしています。「暮らしランプ」には温室もあり、園芸家の代表や園芸療法士でもあるスタッフ理事と植物をテーマにしたプログラムも組んでいきます。ガーデニングの作業は、日光浴や外気浴にもなり、精神の不安や緊張を緩和するともいわれています。「これもまた植物のご縁なので、地域に貢献しながらこのご縁をつないでいきたいですね」と、マリモさんは微笑みます。

マリモさんは、現代人は便利さに慣れすぎて感性が衰えている気がするといいます。「街中に住んでいた3年前、台風が京都を直撃しました。その時、突然電気のある生活から切り離され、不便さに困ったのですが、自分には野性が減っていることに気がつきました。私が自宅をハーフセルフで改築しようと思ったのも、そういった経験からです。キャンプやガーデニングの人気が高まっているのは自然なことなのかもしれませんね。本能的に生きることを高めていかないとまずいと動物的な直感で悟ったのだと思います」。自然と共生したターシャ・テューダーさんのように、今こそ自然との関わりの大切さに気付くべきかもしれません。吉田マリモさんも大原野の地から、自身のライフスタイルを通して自然との共生の大切さを発信していきます。

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華道家 中村俊月 Shungetsu Nakamura
Shungetsu Nakamura
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